東京高等裁判所 昭和63年(行ケ)75号 判決
一 請求の原因一ないし三の事実(特許庁における手続の経緯、本件発明の要旨及び本件審決の理由の要点)並びに別紙二のとおりの訂正審判の審決が確定したことは当事者間に争いがない。
二 本件特許明細書を訂正明細書のとおり訂正することを認める旨の右訂正審決の確定により、本件特許はその訂正後の明細書により特許出願され、これに基づいて特許権の設定の登録がなされたものとみなされる(特許法一二八条参照)から、訂正前の明細書における特許請求の範囲の記載に基づいて本件発明の要旨を認定した本件審決は結果的に要旨の認定を誤つたことになり、かつ右争いのない本件審決の理由の要点の説示から明らかなごとく、本件審決は、訂正前の特許請求の範囲に記載された塗装方法が対象とする「管」について、これが「既に特定の箇所に設置された特定の長さ以上のもののみに限定されるものでないこと」を前提として、各引用例を適用してその進歩性を否定し、本件特許を無効としたものであるところ、右訂正審決の確定によつて別紙二に記載されたとおり、右の「管」は、「既設長尺管」に減縮され、これに伴い訂正前の特許請求の範囲における「塗料」も「液状塗料」に限定されたのであるから、本件発明の要旨の認定の誤りが本件審決の結論に影響を及ぼすことも明らかである。
したがつて、本件審決は、違法として取消しを免れない。
三 以上のとおりであるから、本件審決の取消しを求める原告の本訴請求は、理由があるものとして、これを認容することとする。
〔編注1〕本件発明の要旨は左のとおりである。
管の内面を塗装する方法であつて、管の内部にガスを供給して管内を旋回しつつ進行するガス流を生ぜしめ、管内に供給された塗料をこの旋回ガス流により管内面に吹きつけて塗膜を形成する管の内面塗装方法。
〔編注2〕原告の主張する本件審決を取り消すべき事由は左のとおりである。
平成三年三月一四日本件特許の明細書を訂正明細書のとおり訂正することを認める旨の訂正審決(別紙二(〔編注〕省略)のとおり)がなされ、同年五月一三日に原告に送達されて確定した。これによつて、本件発明は、特許法一二八条の規定により出願当初から左記訂正後の特許請求の範囲の記載のものとみなされるから、訂正前の特許請求の範囲の記載に基づいて本件発明の要旨を認定したうえで、本件特許を無効とした本件審決は、結果的に本件発明の要旨認定を誤つたことになるので、違法として取り消されるべきである。
記
移動不可能に埋設あるいは固定された既設長尺管の内面を塗装する方法であつて、既設長尺管の内部にガスを供給して既設長尺管内を旋回しつつ進行するガス流を生ぜしめ、既設長尺管内に供給された液状塗料を、この旋回ガス流における放射方向の応力、軸線回りの応力及び軸線方向の応力により既設長尺管内面へ吹付け、既設長尺管内面をほぼ均一な塗膜厚さにて塗装することを特徴とする既設長尺管の内面塗装方法。